塩バター通信

シバタさんの頭の中。本のレビューを増やしたい。

大きな傷、小さな傷

傷には大きさと深さがあります。

大きな傷、深い傷、これは誰が見ても大事

(おおごと)です。

小さい傷、浅い傷、かすり傷、こちらはたいしたことありません。か?

いいえ、わたしは、たいしたこと、あると思っています。

ほんの少しの間だけお付き合いした人とお別れすることになってからふた月ほど経ち、ようやくふだんの生活ではなんとも思わないところまで立ち直りました。

行きつけのお店で、たまたま居合わせた40代の女性と結婚や出産の話になり、この間お別れしたばかりだという話をしたら「大丈夫!傷は浅い!」と言われました。

励ましてくれたのだと思います。

その気持ちはとてもありがたいなぁと思いつつ、心の隅っこで「浅くても傷は傷やろ」と思っている自分がいました。

自分が感じたことなのにおかしいですが、なんだか、そうだよなぁ浅くても傷は傷だよなぁって妙に納得して、心に残っています。

小さい傷でも、例えば指先を紙で切ってしまったら、地味に痛い。

地味に痛い、というのは結構ダメージが大きいものです。

傷のことを忘れて生活しているのに、手を洗うと痛い、何かを触ったときに痛い、お風呂に入ったら痛い。

そうやって、ふとした瞬間に存在を思い出させてくる。

それが小さな傷、浅い傷。

大きな傷なら気をつけるけど、小さな傷にはあんまり注意しない。

だからいつまでもチクチクと痛い。

そういうことなのかなぁ。

本当に短い間で思い出なんてほとんど無いのに、その短い期間に見聞きした情報、単語のすべてがトリガーになってその人のことを思い出してしまう。

もうあんまり悲しくなることはないけれど、思い出すとちょっとさみしくなる。

小さい傷、浅い傷は、小さい浅いなりに、ちゃんと「傷」です。

傷はいつか治るけど、小さい傷ならゆっくり治してもいいかも。

何気ない日常生活で、たまに痛みを思い出して、また忘れて日常をおくる。

大きな傷は、なるべく避けたいかな。